現代の医療機器開発において、手術機材メーカーが医療データを効果的に取得・活用することは治療成果の向上や製品改良に直結する重要な課題である。本報告では、日本を中心とした医療機器メーカーが医療データ取得に関して抱える主要な問題点を体系化し、各課題に対する具体的な解決策を提示する。
日本の医療現場では、電子カルテ(EHR)システムが病院で46.7%、診療所で41.6%と普及率が低く、未だ紙ベースの記録が多く残存している[5]。手術データは術式記録、器材使用記録、術後経過観察データなどが別々のシステムで管理される傾向が強く、医療機器メーカーが包括的なデータを取得するには複数の機関との個別契約が必要となる[1]。米国のUDI(ユニークデバイス識別子)システムでは機器属性データと臨床データが統合管理されているのに対し、日本ではMEDIS-DCへのUDI登録が任意であるため、データベースの網羅性に重大な欠陥が生じている[1]。
業界内でHL7 FHIRやDICOMなどの国際標準の採用が進まず、各医療機関が独自のデータフォーマットを使用している現状がある[3]。ある調査では、異なる病院から取得した手術画像データの80%がメタデータ形式の不一致により直接比較不能という結果が報告されている[4]。このデータの「サイロ化」現象は、特に内視鏡手術機器の使用実態分析において深刻な影響を及ぼしている[2]。
改正個人情報保護法の施行により、手術データに含まれる患者識別情報の取り扱いがさらに厳格化された。匿名化処理には平均37工程が必要との調査結果があり、特に術中バイタルデータと画像データの紐付け処理に平均83時間を要する事例が報告されている[4]。ある心臓ペースメーカーの症例では、術後経過データの匿名化コストが総研究費の62%を占めるという財務的負担が明らかになっている[5]。
多施設共同研究の場合、各機関の倫理委員会承認プロセスに平均6.8ヶ月を要し、手術データ取得開始までに14ヶ月を要した事例がある[6]。さらに患者同意フォームの電子化率が23%にとどまり、書面管理の人的コストが研究予算を圧迫している実態が指摘されている[5]。
現在使用されている手術支援機器の78%がオフライン動作を前提として設計されており、術中の使用ログをリアルタイムで収集できるシステムを搭載しているのは17%に過ぎない[7]。ある関節鏡メーカーの事例では、術中データの95%がUSBメモリ経由で手動収集されており、データ改ざんリスクが指摘されている[2]。
AI開発用の手術動画データセット作成において、専門医によるアノテーション作業に1症例あたり平均14.5時間を要している[4]。内視鏡画像の病変部位マーキングでは、ラベリング作業者間の一致率が67%と低く、データ品質管理が重大な課題となっている[4]。